<対談>千葉商科大学 大学院政策研究科客員 小栗幸夫名誉教授

ソフトカー(市街地の走行環境にふさわしい上限速度などを多段階に選択し、選択状況を外部に表示する車)を独自に開発し、2000年から事故低減に取り組まれている小栗名誉教授と対談の機会を頂きました。
千葉商科大学 政策情報学部 小栗研究室 http://softcar-jpn.net/

長年のご研究とその成果、ITS業界の構造的な問題点や現在・未来の社会課題も含め、小栗教授が執筆された「脱・スピード社会―まちと生命を守るソフトカー戦略(2009)」を題材に様々な視点からご教授頂き、我々が目指すべき未来について意見交換をさせて頂きました。

対談場所の近隣で実際の危険な場所をご案内頂きながら、なぜ危険なのかという分析を直接ご教授頂いたところ、

●住宅街にある車一台が通るのもギリギリな道幅の道路がスクールゾーンとして指定されている
●車両の通過時は児童達が車道に背を向けながら壁に向かって張り付くように一列に並び、保育士達が車道側に並んで囲いを作ることで児童を守りながらの通園
●そのような危険な道であっても高速で飛ばしながら通過していく車両の多さ

など、当フォーラム理事会も危険性について実体感することで小栗教授が提唱されている「上限速度に対して車両が自動的に速度制限を行う・速度を外部に表示するシステム」の導入がいかに重要であるかを学ぶ事ができました。

また、区画整理や電車・道路設計がままならない状態で都市開発が進んでしまった街では公共交通の移動手段がないために飲酒運転が増えてしまったような事例もあり、交通事故をなくすためには「まちづくり」から取り組まなくてはならないという点においても小栗教授の研究内容を共有頂く事で、当フォーラムが取り組むべき方向性についても再確認を致しました。

「”不注意や無謀運転で起きた事故をAccidentだとは言わないでくれ、それはCrushなのだ”というのが被害者の気持ち」という教授の言葉がとても印象的で考えさせられました。

ヒトとクルマが安全に共存していくために遠い未来ではなく今できることは何か?という視点を持ちながら今後も取り組みを進めて参ります。

■ソフトカープロジェクトとは?

石巻・ひばり幼稚園を訪問したソフトQカー(2011.12)

●現代文明の象徴である自動車を対象に、既存の技術、革新的技術、社会制度、人間心理などを組み合わせ、技術と人間と社会システムの調和の実現をめざすもの。

●上限速度の設定装置や外部への速度表示装置などをつけることで、既存の自動車を、環境と調和し、他の車や歩行者とコミュニケートする有機的な移動体に進化させ、さらに外部からの速度コントロール装置、新しい交通標識、交通規制、そして、ITSや電気自動車の技術などと連動して、生態系とも呼ぶべき新しい交通システムを生み出す。

支援内容(実績):
2000年、政府公募のミレニアム・プロジェクトに採択され、最高速度を表示・制御する「ソフトカー」開発をスタート。
ソフトカーの電気自動車版「ソフトQカー」が2005年に愛・地球博で使われことを契機に、全国の小学校、大学、自治体などを訪問し、速度表示・制御の必要性をアピールする「ソフトカー教室」を実施。
こども安全プロジェクトの一環として、市川市内の「安全パトロール」に参加。「速度制御走行実験」を実施。
今後、「ソフトカー教室」、「安全パトロール」、「速度制御走行実験」を実施。さらに、ソフトカーを利用したまちづくり計画提案をおこなう。

小栗幸夫 名誉教授 略歴:
1946年、岐阜県瑞浪市生まれ。 千葉商科大学政策情報学部教授、ソフトカー・プロジェクトチーム代表。一橋大学大学院経済学研究科修士課程を経て、米国ペンシルヴァニア大学都市地域計画 学部博士課程終了(都市計画学博士)。筑波大学講師、株式会社西洋環境開発(セゾングループ)勤務などを経て2000年より現職。著書に、「コミュニティ オフイス・2005」(PHP研究所、編集代表)「脱・スピード社会」(清文社)など。